「運命」と「田園」 ― 表題に込められた意味と誤解
今回のテーマは「表題(タイトル)」について掘り下げます。長年私たちが「運命」「田園」と呼び親しんできたこの2曲、それぞれの“表題にまつわる話”を紐解いてみましょう。
まず、交響曲第5番「運命」という呼称ですが、これはベートーヴェンの弟子であるアントン・シンドラーが著した伝記に由来するとされています。シンドラーによれば、彼がベートーヴェンに「冒頭のジャジャジャジャーンは何を意味するのですか?」と尋ねたところ、ベートーヴェンは「運命はこのように扉をたたくのだ」と答えた、というのです。
しかし、後年の音楽研究では、シンドラーの伝記には多数の誤り・偽造があったことが明らかになっており、ベートーヴェン自身がこの表題を付けたという証拠は確認されていません。最近公開された映画「 ベートーヴェン捏造」でも、シンドラーの記録の信頼性が大きなテーマになっています。
「ベートーヴェン捏造」公式ホームページ
https://movies.shochiku.co.jp/beethoven-netsuzou/
それでも今日、「運命」という名前が世界的に定着しているのは、この楽章冒頭の動機の強烈さと、曲が持つドラマ性が「運命」という言葉と響き合ったからかもしれません。
一方、交響曲第6番「田園」については、ベートーヴェン自身がタイトルを付けた数少ない作品の一つです。さらに、各楽章ごとに以下の題名が付されています。
Ⅰ 「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」
Ⅱ 「小川のほとりの情景」
Ⅲ 「田舎の人々の楽しい集い」
Ⅳ 「雷雨・嵐」
Ⅴ 「牧歌―嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」
このように作曲者自らが楽章の描写を明確に示しており、聴き手に“ひとつの物語/情景”を提示しています。
この2曲を比べてみると、「運命」のようにタイトルが作曲家自身によるものではない曲と、「田園」のように楽章ごとにタイトルが付された作品。タイトルの性格が異なることで、作品の聴き方にも微妙な差が生まれてきます。タイトルの背景を知ることで、聴き方がより深まります。ぜひ私たちの演奏で確認してみてください!
第24回 定期演奏会
日時:2026年2月1日(日)14時開演
会場:光が丘IMAホール(東京都練馬区光が丘5-1-1 光が丘IMA中央館4F)
曲目:
ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
指揮:横川雅之
入場無料



