「コリオラン序曲」と「運命」 ― 同じ調性が生む緊張と解放

新年あけましておめでとうございます。今年も大江戸交響楽団をよろしくお願いいたします。

2月1日の定期演奏会に向けて、練習もいよいよ佳境に入ってきました。

これまで「運命」と「田園」の共通点を紹介してきましたが、今回はもう一つの演奏曲、コリオラン序曲と 交響曲第5番「運命」に注目します。

この2曲の共通点は、どちらも 「ハ短調」 で書かれていること。

ベートーヴェンにとってハ短調は特別な意味を持つ調性で、明るい「ハ長調」と対になることで、苦悩・闘争・決意・悲劇性 といった強い感情を表現する際にしばしば選ばれています。

コリオラン序曲はまさにその典型です。全曲を通してハ短調の緊張感に包まれ、最後まで明るさに転じることはありません。物語の主人公コリオランの葛藤と悲劇的な最期を象徴するように、静かに息絶えるように終わります。そのストイックさが、同じハ短調ながらも「闘いから勝利へ」と昇華する「運命」とは対照的です。

一方で、「運命」はハ短調で始まりながら、最終楽章でハ長調に転じて壮大な歓喜を迎えます。暗闇の中から光へ――まさにベートーヴェンが追い求めた理想を音楽で具現化した作品です。

そして当団でも、この「ハ短調」への縁は続いています。

昨年の演奏会では ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番、メンデルスゾーンの交響曲第1番 を取り上げましたが、どちらもハ短調の作品でした。全曲の最後にハ長調へ転じるその瞬間の“解放感”は、演奏していても心が震える体験でした。

さらに来年は ブラームスの交響曲第1番――これもハ短調。偶然にも、ここ数年「ハ短調の流れ」で活動している私たちです。

ちなみに他の作曲家でも、ハ短調からハ長調へ移り変わる構造は古くから魅力的な表現手法として使われてきました。たとえば モーツァルトのセレナード第8番「ナハトムジーク」 でも、暗く荘厳なハ短調の世界から、最後の最後に明るいハ長調に転じる瞬間が鮮烈な印象を残します。

ベートーヴェン、そしてその後の作曲家たちが魅了された「ハ短調の世界」。闇の中に宿る緊張と美しさを、ぜひホールでお楽しみください。

第24回 定期演奏会
日時:2026年2月1日(日)14時開演
会場:光が丘IMAホール(東京都練馬区光が丘5-1-1 光が丘IMA中央館4F)
曲目:
ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
指揮:横川雅之
入場無料